味噌の発酵と熟成

仕込みが終わったらそのままどこか直射日光が当たらず埃っぽくない涼しい場所に保管し、数ヶ月かけて発酵させ、熟成させます。発酵熟成といっても途中で一度の手入れをする以外はずっと置いておくだけ。つまり、放置しておけば自然に発酵して熟成が進み、やがてあの見慣れた味噌になります。

仕込み後の味噌の変化

味噌は常温で保管できます。

仕込み終わってからの仕込み味噌は発酵が進むに従い、元のくすんだ薄い大豆色から徐々に黄色っぽくなり、赤みが加わり、その後は赤みが増して限りなく黒い色へと近付いていきます。また、同時にガスの発生も始まり、発酵は活発化し、気温が高い時期にはタッパーのような密封容器に仕込んだ場合は圧力で蓋が飛ぶ事もあります。この頃になると香り高くなり、焼酎のようなアルコールの匂いもしてきます。この『アルコール発酵』は異常な事ではなく※1、雑菌の繁殖を抑える力になるので、ここまで発酵が進めばカビについてはほぼ安心でしょう。

更に発酵が進むと、重石を乗せている場合は『たまり(溜まり)』と呼ばれる水分も上ってきます。この『たまり』は味噌のエキスと言えるもので、透き通った黄褐色でトロミがあり、香り高く、美味で、味噌表面の酸化による色のクスミを防いでくれる作用があるようです。『たまり』は味噌表面を押すと上がってくるので、これが味噌表面を薄く覆うくらいに重石の重さを調整できたら上手いでしょう。

※1:接着剤やシンナー臭の場合は味噌の香りとして適さないかも知れません。

味噌の手入れ

味噌作りでは、発酵熟成期間の中ほどで一度上下を入れ替える『天地返し』という手入れをすることがあります。これは、水分の多い仕込み味噌で重石をしない場合に固形物と水分とに分離することがあるので、発酵や味が片寄らないように全体をかき混ぜ均一にするという作業です。

味噌の食べ頃

仕込んだ味噌は発酵が進むほどに少しずつ熟成して味噌に近付いていくので、ある日を境に食べ頃となるといった線引きはできませんが、夏を越した味噌は一年で最も活発な時期を経ていてよく熟成しており、美味しいと言われています。また『若味噌』や『熟味噌』、その中間の『中味噌』といった言葉もあり、その時々の味わい方もなされているようです。手作り味噌の食べ頃は?と問われれば、『味噌として美味しく食べられそうな頃』といったところで、手作り味噌はいつから食べられるか?と問われれば、仕込み直後の味噌でも食べようと思えば食べられます。仕込み直後の味噌はまだ全く発酵していないので、こうじの風味の強い、ちょっとしょっぱい煮大豆の味といったところでしょう。しかし、味噌に成り切っていない仕込み味噌は一般には売られていないので、これが味わえるのは自家製味噌ならでは。発酵熟成した味噌との比較の為にも是非お試しください。